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うつ病の原因 うつ病の症状 うつ病の治療方法 周囲のかかわり方 うつ病から統合失調症への移行 躁うつ病 

うつ病が増えているとよく言われます。
その場合に 「うつ病」 という言葉が意味するものとは、おそらく一般的には 「気分が憂うつになり、落ち込み、気力や興味がなくなり、何事も億劫になり、ときに自殺も考えてしまう」 という状態のことではないでしょうか。
実際、DSM‐4のなかで、 「気分障害」 のなかの 「大うつ病エピソード」 の診断基準(要するに、「うつ病の診断基準」 です)は以下のようなものになっています。
(注) DSM-4(正確にはDSM-W) とは、アメリカ精神医学会が定めた「精神疾患の診断分類とその診断基準のマニュアル」です。何度か改訂されてきて、現在のバージョンはDSM-4-TRです。
疾患分類にはこのほかに、ICD-10というWHO(世界保健機構)が定めた国際疾病分類もありますが、精神疾患に関していうとDSM-4に準じています。
すなわち、簡単にいうと、以下の症状のうち(1)と(2)のどちらかを含み、かつ5つ以上が2週間以上つづくものが「うつ病」です。
(1) ほとんど一日中、ほとんど毎日、憂うつな気分で、悲しみや空虚感を感じる。
(2) ほとんど一日中、ほとんど毎日、あらゆる活動に対する興味や喜びが著しく減退している。
(3) 体重の減少、あるいは増加が著しい。またはほとんど毎日、食欲が減退あるいは増加している。
(4) ほとんど毎日、不眠または睡眠過多である。
(5) ほとんど毎日、精神運動性の焦燥、または制止がある。
(6) ほとんど毎日、疲れやすさを感じる。または気力が減退している。
(7) ほとんど毎日、無価値感、または不適切な罪悪感(妄想的なこともある)を抱えている。
(8) ほとんど毎日、思考力や集中力が減退し、決断を下すのが困難である。
(9) 自殺についての、反復性の思考や計画にとらわれている。
まとめると、症状としては、
憂うつ感、無気力、興味や関心の喪失、食欲の減退、睡眠障害、思考力や集中力の低下、自殺願望
などです。
それでいて、マスコミなどで、「うつ病」に関してよく耳にするフレーズは、
うつ病は「心の風邪」とも言われ、誰にでも起こりうる心の病気です。
というものです。
はたして、こんな状態が「こころの風邪」でしょうか?
いえいえ、これは「うつ病」でも「こころの風邪」でもありません。
外来で大勢の患者さんを日々診療している精神科医からすると(少なくともわたしからすると)、これらの症状の多くは、「統合失調症」の症状です。統合失調症うつ病と統合失調症の各ページを参照。
「統合失調症」と言いたくなければ、「抗精神病薬が効くうつ病」あるいは「抗うつ薬が効かないうつ病」と呼んでもかまいません。(ただし、このような表現をすると、話がややこしくなるだけではなくて、治療方針も一貫しなくなりがちですし、そもそも患者さんに対する説明が難しくなり、そのような言い換えは「無理して話をICD-10やDSM-4に合わせているだけ」で、何も得るものはありません。)

では、「本当のうつ病」、言い換えると「抗うつ薬が効くうつ病」(抗うつ薬が効く病気、と言い直してもいいのですが)とは、どんな病気でしょうか?

このページでは、ほんとうの「うつ病」に焦点をあてて、明快に解説していきます。

 うつ病は「こころの風邪」ではなくて、「こころの生活習慣病」です。
うつ病は、「感情障害」 「気分障害」 などとも呼ばれます。それはそれでいいのだと思います。ただし、問題は、どう呼ぶかではなくて、中身です。
また、最近、「うつ病なんて怖くないよ。」 「うつ病になっても心配いらないよ。」 「うつ病なんて軽い、軽い。すぐ治る病気だよ。」などという意味合いを込めようとして、のことと思いますが、よく「うつ病は”こころの風邪”です」という説明がされています。
それは違うと思います。
うつ病は”こころの風邪”ではありません。”感染症”ではなくて、”生活習慣病”だと思います。ここのところをきちんと押さえておかないといけません。
 うつ病の原因

では、うつ病が「こころの風邪」ではなくて「生活習慣病」である、とする根拠は何でしょうか?
うつ病の原因としては、以下のような「生活習慣」を身につけてしまうことが考えられます。
(1) つい人に気を遣ってしまう。
(注) 統合失調症の場合(人目を気にしてそれに振りまわされる)とは違い、相手のために良かれと思って積極的にかかわっていってしまう。必要以上の気配りをしてしまう。
(2) 周囲の期待に応えようとして、つい頑張ってしまう。あるいは、つい気負ってしまう。
(注) 統合失調症の場合(気力がないのに人の評価が気になってムリをしてしまう)とは違い、「自分の役割」であると考えていることを積極的・精力的にこなそうとする。
(3) 人から頼まれたら、断りきれない。抱え込みやすい。
(注) 統合失調症の場合(断り下手で抱え込んだ挙句にいつも後悔してしまう)とは違い、ゆとりがあるかぎり積極的に引き受け、人の分も手伝おうとする。
(4) 引き受けたことは、完璧にやらないと気がすまない。
(注) 統合失調症の場合(後からの評価・人からの評価が気になるために完璧さを期する)とは違い、全身全霊でよい仕事をしようと夢中になって取り組んでしまう。
などです。
これらの生活習慣を身につけてしまうことが、うつ病の原因となります。また、うつ病の状態になると、これらの生活習慣がいっそう強まっていきます。
うつ病患者さんの話を聞いていくと、皆さんがこのような生活習慣をもっているということに気づきます。では、うつ病になる人はどうしてこういう生活習慣を身につけてしまうのでしょう。

「効率化」を求める現代社会のあり方が、うつ病が増加してきている大きな要因のひとつだと思われます。
現代社会のせっかちなペース、テンションの高さ、情報化社会による情報の洪水状態に対して、ある者は積極的・能動的にかかわっていこうとします。そして、その結果として「うつ病の生活習慣」を身につけてしまいます。また、ある者は周囲のペースに翻弄され、消極的・受動的となっていき、「自分はこのペースについていけない」という思いを強めていき、その結果として「統合失調症」の状態に陥ってしまうのです。
そして、現代社会において、「ついていく努力」(うつ病)よりも「ついていけない思い」(統合失調症)が優勢になってきています。現在、その結果として、うつ病患者さんよりも統合失調症患者さんのほうがその数ではるかに圧倒するようになっています。現代はまさに「統合失調症の時代」です。当初は能動的・積極的に「現代社会をリードして行こう」、「現代社会のペースについて行こう」、「ついていけるさ」と考える人が多かったと思います。
極端な言い換えをすると、うつ病が現代社会を作りあげてきましたが、その結果できあがった現代社会は統合失調症を増やしてきています。(それだけの単純な話ではありませんが…現代の問題点を端的に表現すると、そうなります。)
しかし、気づいてみるといつの間にか、社会のペースが速くなりすぎ、徐々に「とてもじゃないが、このペースにはついていけない」という思いをいだく人、「こんなペースに自分はいつまでついていけるのだろうか?」という先行きの不安をもつ人、「どうしようどうしよう」という浮き足だった気持ちをいだく人が増えてきているのです。したがって、下記のうつ病から統合失調症への移行も増える傾向にあるように思われます。
そのような現代社会に生きるわたしたちには、「うつ病」にならないための心がけとともに、「統合失調症」にならないような心がけが必要になってきています。( → このテーマは、いずれこころのクリニック part 2のサイトのほうで取り扱っていきたいと思います。)

 うつ病の症状
うつ病の症状としては、以下のようなものがあります。
A. 精神症状
(1) 集中力がなくなります。頭が働かなくなります。
※ 疲れきっているので、当然頭は働きません。注意散漫になります。理解力も低下しがちです。
(2) 簡単なことも、なかなか決断できなくなります。
※ (1)と同じ理由で、頭が働きませんから、優柔不断になっていて決断力が低下します。
(3) 物忘れが多くなります。
※ (1)(2)と同じ理由で、注意散漫になります。また、疲れきっているために良い睡眠がとれなくなるために、記憶力が低下します。
(4) 焦りが出てきて、せっかちになります。
※ 気持ちにゆとりがなくなるので、落ち着かなくなり、セカセカしだします。ただし、(統合失調症のように)あまりオロオロしたり、パニックになったりすることはありません。
(5) 些細なことでイライラしやすくなります。
※ 気持ちにゆとりがなくなるので、ちょっとしたことでイライラしたり、怒りっぽくなります。
ただし、理由もなく周囲に当り散らす、八つ当たりしだすといった統合失調症の「不可解で強いイライラ」とは質が違います。
(6) 気持ちが落ち込み、憂うつになります。
※ それでも統合失調症とは違って、気持ちの前向きさは失わず、悲観的、絶望的な気持ちをいだくことはありません。したがって、うつ病の場合には「消えてなくなりたい気持ち」 「いなくなりたい気持ち」は生じません。
(7) 不安感が強まります。
※ 集中力・理解力の低下によって種々の作業がいつもどおりにいかなくなるための不安であったり、疲労感や焦りからくる不安感であり、比較的軽いものです。
統合失調症の場合の強い不安感・恐怖感・緊迫感とは違います。取り越し苦労が強まったり、先行きの不安が強まったりすることもありません。うつ病の場合には、あくまでも前向きでいられます。

B. 身体症状
つねに気負っていて、気を張っていて、構えているために、全身、とくに上半身(とくに肩など)に力が入り続けているものです。
(1) 頭痛、肩こり、息切れ、息苦しさ(過呼吸発作)など。
※ 上記のとおり、とくに上半身に力が入りやすく、なかでも肩には力が入りやすく、うつ病の場合、ほぼ全員が肩こりをもっています。また、筋肉が肩とつながる頭の緊張性頭痛はかなり多くの場合に出現します。
前胸部の筋肉もバンバンに緊張してますから、深く息を吸えなくなり、息苦しさや息切れの症状も出現することがあります。
(2) 倦怠感、疲れやすさ、めまいなど。
※ 頑張りすぎているので、疲れやすくなりますし、全身のだるさ、ふらつき、脱力感も生じます。歩いても階段の上り下りなどしても、足に力が入らず、また、(1)のとおりに息切れもしやすくなっています。
(3) 吐き気、胃もたれ、胃痛、下痢や便秘(過敏性腸症候群)、食欲不振(ときに過食、摂食障害)など。
※ 疲れすぎたときには、吐き気がしたり吐いたりすることがあります。次項(睡眠障害)でも述べますが、睡眠中も不安・緊張が続き、寝ていても疲れてしまうので、朝起きたときに吐き気がすることもたびたびあります。
不安・緊張の連続のせいで、胃の調子が悪くなったり、下痢や便秘になったりします。
また、疲れすぎていて食欲がなくなることが多いものです。とくに慢性の疲労で食欲不振となり、食べられなくなり、体重減少がみられます。
逆に、食欲はないのに過食してしまうこともあります。これは、精神的に一気に疲れたときに食欲はないのに、無性に甘いものや味の濃いものを食べたくなってしまうという、健康な人にもありがちな理由からです。だから過食をくり返していて、体重がどんどん増えていくこともよくあります。
(4) 耳鳴り、耳の閉塞感、めまい、たちくらみなど。  
※ これらの症状も疲れきっているときによく見られます。キーンと耳が鳴ったり、耳に水が入ったように急に耳がふさがったようになり、耳の聞こえが悪くなります。これは内耳の空気圧を調節するために開いている耳管が、疲れるとむくんで狭くなりふさがってしまうからです。
(5) 動悸、胸の痛みなど。
※ 疲れてきたときにはこれらの心臓付近の症状が現われることも少なくありません。
(6) 

C. 睡眠障害
眠れなくなったり(入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒)、深く眠れなくなったり(熟眠障害、多夢浅眠)して、起床後も疲れが取れていません。
※ うつ病の場合、日中に緊張感が持続します。そのために睡眠前には精神的にも疲れきっており、精神的な余裕はなくなっています。すると、睡眠中も緊張・不安が持続します。
わたしたち”高等動物”では夜になると大脳は疲労回復のために眠りますが、中脳(爬虫類などの”下等動物”では大脳はほとんどなくて脳の大部分が中脳です。中脳は生存本能の中枢です。)は24時間覚醒していて、生命に大切な機能を24時間サポートし続けますし、生存を脅かすようなことがあると興奮して盛んに活動しはじめ、生き延びるための行動をわたしたちにとらせようとします。
睡眠中も緊張・不安が持続していると、大脳は睡眠をとっていても、中脳は「おきろ、おきろ、危険だぞ!」という信号を大脳に送りつづけ、わたしたちを目覚めさせて生きのびるために必要な行動をとらせようとします。ですから、精神的に疲れていると、身体は疲れていても、眠りは浅くなり、質のよい睡眠はとれなくなるのです。
また、一晩じゅう夢のなかでも働き続けていて、結局、眠った気がしない、という結果にもなりがちです。
うつ病の場合、眠られなかったり、眠ったとしても質のよい睡眠がとれず、結果として朝起きてからも疲れが取れていません。
これが、うつ病の睡眠障害のいちばんの特徴です。

D. その他
(1) ハイ・テンション状態
身構え続け、気負い続けていると、やがて全身から力が抜けなくなります。力が入りすぎた状態がつづき、気分的にもテンションが高い状態が出現します。
一般の人には、これを「そう状態」と勘違いする人がいます。(うつなのに、躁の状態もある。だから、これは「躁うつ病」なんだ、という勘違いです。 → 躁状態を参照。)
    
※ 上記のとおり、とくに上半身に力が入りやすく、なかでも肩には力が入りやすく、うつ病の場合、ほぼ全員が肩こりをもっています。また、筋肉が肩とつながる頭の緊張性頭痛はかなり多くの場合に出現します。
前胸部の筋肉もバンバンに緊張してますから、深く息を吸えなくなり、息苦しさや息切れの症状も出現することがあります。
             

 うつ病の治療方法
A. 薬物療法
うつ病は生活習慣病ですから、生活習慣の立て直しが大事です。
しかし、他の生活習慣病と同様に、はじめのうちは薬の服用によって症状を改善することは、生活習慣による悪循環を断ち切っていくのに効果があります。

薬による治療には、抗うつ薬と抗不安薬を併用するのが一般的な方法で、これに睡眠薬を追加することもあります。
(1) 抗うつ薬 (気分を明るくし、元気を出す薬)
抗うつ薬としては、SNRI、SSRI、非定型抗うつ薬、四環系抗うつ薬、三環系抗うつ薬などがあります。
このなかで、主にSNRIとSSRIが使われます。四環系抗うつ薬、三環系抗うつ薬は副作用が多く、とくに三環系抗うつ薬はいろいろ問題があるため、治療には極力使用しないようにするのが最近の傾向です。
種類 一般名 商品名 1日量
SNRI ミルナシプラン トレドミン 50〜100mg、症状に応じ適宜増減(最高150mg)
SSRI パロキセチン パキシル 10〜40mg、最高50mg
フルボキサミン ルボックス
デプロメール
50〜150mg、症状に応じ適宜増減(最高300mg)
四環系抗うつ薬 セチプチリン テシプール 3〜6mg、症状に応じ適宜増減
ミアンセリン テトラミド 30〜60mg、症状に応じ適宜増減
マプロチリン ルジオミール 30〜75mg、症状に応じ適宜増減
三環系抗うつ薬 ドスレピン プロチアデン 75〜150mg、症状に応じ適宜増減
ロフェプラミン アンプリット 10〜150mg
アモキサピン アモキサン 25〜75mg、最高300mg
クロミプラミン アナフラニール 50〜100mg、最高225mg
ノルトリプチリン ノリトレン 10〜25mg、最高150mg
アミトリプチリン トリプタノール 30〜75mg、最高300mg
イミプラミン トフラニール 25〜75mg、最高300mg
これらの抗うつ薬のうち、SNRIとSSRIを使用するのが一般的です。
たとえば、トレドミンをまずはじめに、
寝る前
15mg1錠 15mg1錠 15mg1錠
のように服用してもらいます。
眠気・だるさなどの副作用がなければ、
寝る前
15mg2錠 15mg2錠 15mg2錠
のように増量し、効果が十分に得られなければ、
寝る前
25mg2錠 25mg2錠 25mg2錠
まで増量します。

パキシルであれば、
寝る前
10mg2錠
のように服用してもらいます。(その際、念のために10mg1錠からはじめてもらい、翌日に眠気やだるさがでないようであれば10mg2錠にして服用してもらいます。そして、効果が十分に得られるまで、
寝る前
20mg2錠
まで増量します。

ルボックスデプロメールであれば、同様に
寝る前
25mg1錠 25mg1錠 25mg1錠
から開始して、
寝る前
50mg2錠 50mg2錠 50mg2錠
まで増量していきます。

(2) 抗不安薬 (不安、イライラ、緊張などを改善する薬)
種類 一般名 商品名 使用量(1日量)
チエノジアゼピン クロチアゼパム リーゼ 15〜30mg(1日3回)
エチゾラム デパス 1.5〜3mg(1日3回)、または、1〜3mg(就寝前1回)
ベンゾジアゼピン ジアゼパム ホリゾン、
セルシン等
4〜20mg(1回2〜5mgで1日2〜4回)、
原則1日15mg以内
オキサゾラム セレナール 30〜60mg(1回10〜20mgで1日3回)
クロキサゾラム セパゾン 3〜12mg(1回1〜4mgで1日3回)
ブロマゼパム レキソタン 6〜15mg(1日2〜3回)
ロラゼパム ワイパックス 1〜3mg(1日2〜3回)
クロラゼプ酸2カリウム メンドン 9〜30mg(1日3〜4回)
フルジアゼパム エリスパン 0.75mg(1回0.25mgで1日3回)
アルプラゾラム ソラナックス、
コンスタン等
1.2mg(1回0.4mgで1日3回)、
1日最高2.4mg(1日3〜4回)
トフィゾパム グランダキシン 150mg(1回50mgで1日3回)
ロフラゼプ酸エチル メイラックス 2mg(1日1〜2回)
その他 タンドスピロン セディール 30mg(1日3回)、1日最高60mg
これらの抗不安薬のうち、うつ病の場合には、リーゼ・ワイパックス・セディールなどの軽い抗不安薬で十分な場合が多いようです。
不安感、イライラ感、精神的緊張、頭痛や肩こりなどに肉体的な緊張がみられるときには、抗うつ薬単剤で治療するのではなくて、必ずこのような軽めの抗不安薬を併用すべきでしょう。
たとえば、リーゼをまずはじめに、
寝る前
5mg1錠 5mg1錠 5mg1錠
のように服用してもらい、効果が不十分なら、
寝る前
5mg2錠 5mg2錠 5mg2錠
のように増量し、効果が十分に得られなければ種類を変えて、
たとえば、
ワイパックスを、
寝る前
0.5mg2錠 0.5mg2錠 0.5mg2錠
のように処方します。
また、リーゼでも眠気やだるさがでるようなら種類を変えて、
たとえば、
セディールを、
寝る前
5mg〜10mg1錠 5mg〜10mg1錠 5mg〜10mg1錠
のように処方します。

(3) 睡眠薬(睡眠導入剤)
ベンゾジアゼピン系睡眠薬など。
種類 一般名 商品名 使用量(1日量) 半減期(時間) Tmax(時間)
超短時間型 ゾルピデム マイスリー 5〜10mg 1.5〜2 0.8
トリアゾラム ハルシオン 0.25〜0.5mg 2〜4 1.2
ゾピクロン アモバン 7.5〜10mg 4 0.8
短時間型 ブロチゾラム レンドルミン 0.25mg 3〜6 1.5
エチゾラム デパス 1〜3mg 6
リルマザホン リスミー 1〜2mg 10 3
ロルメタゼパム エバミール 1〜2mg 10 1〜2
中間型 フルニトラゼパム ロヒプノール
サイレース
0.5〜2mg 9〜25 1〜2
ニトラゼパム ベンザリン
ネルボン
5〜10mg 28 2
ニメタゼパム エリミン 3〜5mg 12〜21 2〜4
エスタゾラム ユーロジン 1〜4mg 24 5
長時間型 ハロキサゾラム ソメリン 5〜10mg 42 2〜8
クアゼパム ドラール 20〜30mg 36 4〜22
フルニトラゼパム ベノジール
ダルメート
10〜30mg 65 1〜8
              (注)最高の血漿中濃度に到達するまでの時間(Tmax)が早いものは、寝つきをよくします。
                 また、投与量が多くなれば、作用時間も長くなります。
            
これらの睡眠薬を使用する前に、ふつう抗うつ薬や抗不安薬を就寝前に服用してもらいます。
たとえば、デジレル(抗うつ薬の表を参照)とデパス(抗不安薬の表および睡眠薬の表を参照)をまずはじめに、
寝る前
デジレル25mg1錠
デパス0.5mg1錠
のように服用してもらいます。
ふつうは、この処方で、睡眠薬では得られないような、質のよい睡眠が得られます。
デジレルが合わなくて起きてから1時間くらい頭がボーっとするという場合があります。その際は、デパスだけにします。また、デパスで翌日午前中の眠さやだるさがある場合、デパスをリーゼに替えるなどします。

上記のデジレル・デパスの組み合わせで十分に良い睡眠が得られない場合、睡眠薬を超短時間型から試していきます。

B. 精神療法など
(1) 精神療法
病気の症状・本質の説明を行い、病気に対する患者さんの理解を深めてもらいます。
また、うつ病になりやすい「生活習慣」の改善を中心に、生活面のアドバイス、対人関係のアドバイス、仕事のやり方に関するアドバイスなどを、一人一人の患者さんに合わせて行っていきます。
(2) カウンセリング
自分の気持ちを言葉で表現することによって、自分の気持ちに気づけるように、考えを整理していけるように、援助していきます。おもにカウンセラー(臨床心理士)が行います。
(3) 家族療法
家族の接し方をアドバイスしたり、不安を抱える家族の精神的なサポートをしていきます。
(4) 精神科デイケア
対人関係の訓練、自信の回復、気分転換などを目的に行います。
C. 周囲のかかわり方
(1) なによりもまず、周囲の人たちも「うつ病」について十分に理解して、協力することが大切です。

(2) よく言われるように「励まし」は禁物です。
※ うつ病の人は、周囲の期待に応えようとしてつい頑張ってしまうという習慣を身につけています。ですから、周囲が励ますと、その期待に応えようとしてつい頑張ってしまいます。
(3) 焦ると逆効果になるだけです。うつ病の病状・経過には波があるものなので、本人の病状に一喜一憂せず、治療の成果をあまり期待しすぎないようにすることが大切です。
※ 周囲の人たちも気持ちに余裕がなくなっているようなら、その人も「うつ病」になっているか、うつ病になりはじめている証拠です。
(4) 「気分転換」や「ストレス発散」のために、外出・散歩をさせたり、外をつれまわしたりし過ぎないようにしましょう。
※ そもそも「ストレス」とは、余裕がないから感じるものです。ですから、むしろムダな外出や活動は控えて、ゆっくり休養してよ夕を取り戻すことで、「ストレス」は感じなくなるものです。ストレスは発散するものではなくて、感じないようにするべきものです。

 
  うつ病から統合失調症への移行

(1)  うつ病の状態(心にゆとりがない状態)が、先の見通しが立たず、出口の見えないまま長く続いた場合。

(2)  もともとコミュニケーションの苦手な人が、人に相談できず、あるいは周囲のアドバイスに耳を貸さずにがんばり続け、うつ病の状態が長く続いた場合。

(3) 孤立無援の状態が長く続いた場合。

このような場合に、「うつ病」の状態から、「統合失調症」の状態に移行していくことがあります。>
またさらに、次のような場合にもうつ病の状態から統合失調症の状態に移行していきます。すなわち、

(4) (周囲の評価を気にして、人目を気にして)人に気を遣い、周囲の期待に応えようとして頑張ってしまい、頼まれたら断りきれず、引き受けたことは完璧にやろうとしてしまう場合、その結果として精神的に余裕をなくした場合、それは「うつ病」の状態ですが、このように周囲のペースに振りまわされてうつ病になった場合には、やがて「統合失調症」の状態にもなっていきます。

この場合には、わたしの経験では、統合失調症の治療(抗精神病薬による治療)とともにうつ病の治療(抗うつ薬による治療)も必要になるようです。

  躁うつ病について

躁うつ病は「双極性感情障害」 「双極性気分障害」などとも呼ばれます。

病識が十分に生まれにくく、また、精神病状態が出現しやすく、「うつ病」よりも「統合失調症」に近い疾患といえます。

 >躁うつ病の原因

原因は不明ですが、遺伝的な素因が「うつ病」や「統合失調症」よりも強く関与しています。

 躁うつ病の症状

(1) うつ状態(うつ病の項を参照。)

(2) 軽うつ状態

(3) 躁状態(万能感が生まれて、世界が自分中心に回り出します。誇大妄想が生じることもあります。)

(4) 軽躁状態(気分が高揚し、多弁多動になります。)

(5) 精神病状態(幻覚妄想状態、滅裂言動などが出現します。)

これらの状態が繰り返し(周期性、循環性に)現れたり、混合して現れたりします。

 躁うつ病の治療方法>

薬物治療

(1) 抗躁薬 〜 炭酸リチウム。

(2) 抗てんかん薬 〜 カルバマゼピン、バルプロ酸など。

(いずれも、情緒を安定させ、気分の波を安定化させる薬)

(3) 抗精神病薬 〜 鎮静・抗幻覚妄想などの目的で使用。

(4) 抗うつ薬

(5) 抗不安薬

精神療法など

うつ病などの場合に準じます。

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